擦過鍼で認知症に関わるということ
これまで、「擦過鍼をすると周辺症状が緩和する」ということでみなさんに紹介してきた。
介護保険制度が始まって以来、介護支援専門員研修の事例検討で、毎回上がってきた事例は、認知症の困難事例と、虐待事例である。
グループの演習の中で、意見は様々でるが、これといった決定的なプランは示せず、現在に至っているように伺える。
この2つの事例は、既存のサービスでは限界があると言わざるをえない。
擦過鍼が認知症の周辺症状の緩和に効き目があるといってきたが、実は認知症に効果があるということは、虐待にも大きな力になるのである。
虐待に認知症が関わるっている割合を調査したものを見てみると、認知症があり46.5%、認知症あるがほぼ自立10.6%、認知症の疑いあり12.8%(「東京都高齢者虐待事例情報調査の結果について」2006)と、認知症が関係している事例が約70%にのぼる。
認知症介護の困難さが、多くの場合、周辺症状にあることを考えると、擦過鍼をすることで周辺症状を緩和できれば、虐待についても予防ができるということになる。
我が親が認知症になり、家庭では介護困難になってグループホームへ預けることになるが、擦過鍼をして、周辺症状が緩和し、落ち着いて生活できるようになると、家族さんが訪ねてきても、和やかに話ができ、家族を見送り、生活できている姿には、家族さんも「預けてよかった、また面会に来よう」と安心できる。実際に関わっていくとそのようになっていく。
厚労省も、心地よい刺激や、笑うことにより、意欲をもたらす脳内物質(ドーパミン)がたくさん放出されているということは認識している。このことを考えても、擦過鍼施術がもたらす気分の改善効果は、これを否定することはできない。
この2大困難事例をを解決していく大きな糸口になる。
日本の鍼灸師がこれを実践していかない理由がない。もっとたくさんの鍼灸師がこのことに目覚めて、擦過鍼を使って認知症に対応していくことが、今一番重要なのではないか。
これを実践していくことで、鍼灸師が大きな社会貢献していくことができるのである。